『「大人になりきれない人」の心理 (PHP文庫) 』を読んだ

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なんじゃこりゃあ(笑)

 

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あんまりというか全然おすすめはできないね

少なくとも俺はこの内容に呆れてしまった

 

ざっくり説明してやろうか?

 

ほぼ最初から最後まで「心や体験が満たされていない大人(この書籍ではしきりに「五歳の子供 というふうにたとえられている)」は 何もかもに飢え 自分が許容されなかった経験から他人に厳しく 常に辛い想いをしている ということをこれでもかというくらいにうすめてダラダラと微妙に上から講釈をたれてきている そんな感じである

 

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初版は2008年のようだ

あのころの社会の風潮をあまり覚えていないのだが

 

この本は「良い子」「真面目な子」という像に対して徹底的な悪意を向けつつ 彼らは子供のころにやりたいことをやれなかったから 他者の我儘を許せないのだ という第一章第二章の主張と

社会への敵意や日々の生きづらさを 愛に飢え孤立していることによるものであるという第二章後半から第五章の説教で主に構成されている(こういう本にありがちな 手軽に批判しやすい「男」に関する節も随所に散りばめられている)

 

前半についてはまあ一部理解できる場所がないでもないんだけど だから社会ではこういうフォローが必要だよね とか 自分ならこういう手の差し伸べ方をする とかそういう前向きな話がなく ただただひたすらに 子供の頃にやりたいことをやりきれなかった(要するに遊び下手だった)者らの不寛容性の批判に終始しているのである

「真面目などということは、信用できない」なんて節タイトルがでてきたときは思わず笑ってしまった

 

あんまこういうレッテル貼りは好きじゃないが 経歴をみると この人にはいわゆるメタ思考は難しいだろうな という感じである

 

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ただ 遊びに飽きて他者のために生きようと思った時点が大人の第一歩であり 挫折を早いうちに経験しまくって荒波を生き抜く力を身につけておくべき というのが意見の軸であれば俺もそれにはほぼ同意する

 

しかしこのオッサンの理想の「大人になりきった人」像を「心理的に健康(な大人)」と表現するのはどうなのよ

 

五章の最後のほうではこの人が考えた解決策として「生きることを楽しめ」だの「過去の憎しみは忘れろ」だのこれまた好き放題書き散らしている

 

まあ本人が満足ならそれはもうそれで文句つける気もないけどさ

楽しめだの寛容になれだの俺が直接目の前で言われたら多分ぶん殴っていると思う

 

人生楽しいにこしたことはないし 他者をゆるすことのできる気持ちも重要だと思うが

自分自身を騙し捻じ曲げてまでそうなれとはどういうことだろうか

俺はそういう負の感情を常に持っておくことも大事だと思うよ

人がそれぞれ抱える「生きづらさ」だって まさにその人と不可分のものだろう

 

何かを成し遂げるにはそういうおかしなある種の偏執性や不寛容性や もっというと生きづらさに直結する狂気が必要なはずだ

 

ところでこういう大人になりきれていない人を五歳児と表現するのって何か理由があるんでしょうか?

 

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ちょっと話は変わるが 俺は前々から言ってるように「自分らしく…(…には生きるだの暮らすだの入れてもいいし 頑張らないとかつなげてもいい 自分らしさという活用もあり)」という言葉が嫌いなのだ

 

大谷翔平大谷翔平らしいし 藤井聡太だって藤井聡太以外のなにものでもない

彼らは実に自分らしく生きているが 自分らしさの源は常人では考えられない凄まじい努力によるものであり

怠けたり頑張らなかったり逃げたりすることに独自性やユニークさは一切ない

(そういう連中には 努力しないなんて「あなたらしい」ね と言ってみたいもんだな 絶対怒るだろうけど)